Dangerous Mind

Dangerous Mind

大島輝之さんの1stソロアルバムにちなんだ特別編成のバンドを見に渋谷デュオに。大島さんのこれまでのバンド、feepもsimも初めて見たとき、並々ならぬショックを受けて、その後自分の音楽は大いに影響された。アンサンブル中のギターの使い方にしても、ベースやドラムといった楽器名よりも、純粋に周波数によって区分されているようなリズム要素の配置にしても、楽曲中の即興的なパートに対する捉え方(即興に「逃げる」ことを回避しているようだった)にしても、何もかもが新鮮だった。音楽の中の「退屈さ」のパラメーターを操作するような作曲の仕方や、何かが起こりそうで、結局何も起こらないような感じ(それは古谷実が「ヒミズ」を経て「シガテラ」でやり遂げた事だと思うのだけど)、何も起こっていないようで実は何かが起こっているという感じ、クールさを全体の雰囲気ではなく、曲の要素や作曲の原理に反映させる手法など、それまで音楽中でストレートに「何かを起こす」ことしか考えていなかった自分は、ただただ衝撃を受け、そしてそれは自分たちの生活にとってとてもリアルな音楽であるように感じられたのだった。また、それらのコンセプトがあくまで肉体的に、ロックやファンク的なダイナミズムを伴って、ライヴで表現されている事も驚きだった。バンドや、音楽に対する考え方が更新されたといっても決して言い過ぎではない。
で、今回の大島さんのバンドは、ドラム二台に、ベース、管楽器、鍵盤、ギター、コンピューター、シンセという大人数の編成で、各楽器がソロをとる曲も多く、simと比較すると、ジャズっぽい意味での即興的な要素が曲中に増えた感じのものだった。俺は開演前にサブウェイで海老アボガドサンド(うまい。)を食べていて、ライヴに遅れてしまったので最初の方を思い切り聞き逃してしまっているのだけど、全体的に作曲された部分とそれ以外の部分とのバランスに変化があったと思う。また、真ん中のドラムのハットが完全に左に振られていたり、シンセが相当低い、殆ど物質みたいな響きの持続音を出していたりして、PA的な実験もなされているようだった。折り込まれていたチラシを見ると「50、60年代のジャズをテーマに〜」と書いてあり、なるほど、とも思うし、わからない部分もある。12月に発売のアルバムで、今日の音楽をもう一度確認するのが今からとても楽しみだ。

SIM

SIM