Dangerous Mind

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耳かきとの別れ

耳かきについて
耳かきはとても好きなのだけど、これは、全くしない方が良いみたいだ。
しても、良いことは一つも無いみたい。
昨日の午後、ふと気がつくと右耳が閉じた感覚があり、それが一日中続いた。
ここ数日、割合ハードに働いていたので(spectrasonics製品の音の強さ、凶暴さは相当なものがある)、とうとう何かしらの聴覚的破綻がやってきたのかと思い、心の中で冷や汗をかいた。
症状としてはとにかく会話が聞こえ辛く、ずっと片耳だけイヤフォンをしているような状態で、口の中の音がやたら大きく聴こえる。近所の薬局で特売していたホームパイを食べると、パイが裂け、砕け散る音響が推奨デシベル以上の音量で頭の中に鳴り響き、(多少大げさだが)頭がおかしくなりそうだった。
今朝起きても治ってくれてなかったので、朝一番で高田馬場の耳鼻科に行った。そこで自分の耳の中を生まれて初めてカメラで覗いたのだけど、なかなか棲むにはハードそうな場所だった。ジャングルの端の方の地帯と、下水管を足しあわせて肉色にしたみたいな場所だった。
とにかく、そこの中耳の皮膚が耳かきによってひっかかれて無くなり、細菌が入り、膿んだことで生じた耳垂れが、鼓膜にくっついて、物理的に栓をしてしまっていたのだ。汚らしい話なのだけど、そういう説明を受けた。
極細の掃除機のようなものを耳に突っ込んで、膿を吸い出してもらった。鼓膜についた耳だれが引っ張られる時、コンデンサマイクのグリル部分を指の腹でカサカサこすっているのを最大音量のヘッドフォンでモニタリングしている時のような、物凄い音がした。
耳垢というのは耳にとって必要なものなので、むやみに取り除いてはいけないという先生の話。耳垢は自然に体内から体外へと移動していくし、無理に取ろうとすると、耳内を傷つけて、こういった結果を招くのがオチとのこと。一生に一度も耳かきをしなくても、基本的には平気であるとのこと。
これ以上詳しい説明は私には無理なので、「耳かき 危険」とかで適当に検索してみてください。
だから、耳かき製造業の人には大変申し訳ないのだけど、結論としては耳かきは不要で、しないに越した事はない。特に、自分みたいにすぐ限度を忘れて熱中してしまう傾向のある人間はやらない方が良い。
実家から持ってきた、数十年来使ってきた古い耳かきに、とうとう別れを告げる時がやって来た。

ところで、一日、片耳が聞こえにくい状態で過ごしたことによって、自分の右耳、左耳の個性というものがわかってきた。
右耳は良く使い込まれているが、その分少し磨耗しつつある。入ってきたものを分類し、聞き分ける能力は高いが、聴力自体は左の方が上のようである。
逆に左の耳はまだ若く、熱意があってがむしゃらな所もある。まだあまり使われてないので多少不器用な部分があり、新卒の男子新入社員のような存在である。
両方開いている時は、自覚できていなかったのだけど、明らかに利き手や利き足と同じように利き耳というものが存在して、それは自分は右だ。
これを応用して、例えば片耳だけ耳栓をして一日過ごす、といようなトレーニングが考案される。
イメージとしては、バスケットボールの選手が利き手とは逆の手で食事をする、みたいな感じである。
実際、何だか既に昨日今日で、自分の背後の音の定位感が前よりわかるようになった気がする。気のせいかもしれないけど、そういう効能があっても別におかしくないとは思う。