Dangerous Mind

Dangerous Mind


北欧のブラックメタルバンドKorpiklaaniのビデオ。前も一回貼り付けたんだけど、今日やっぱり面白いなーと思って見返していて、しかし自分は何でこんなにこのビデオに惹かれてしまうんだろうと思って、それを考えながら見ていると、それはイントロのドラムの一発目、微妙にモタった感じがする一打と、薪割りのモーションが大幅にズレている事が原因なのかなーと思った。しかも薪割りの映像の方が先なので、無音での薪割り映像の0.5秒後くらいにドパッとドラムが入ってくるわけで、もしその順番が逆だったらあんまりインパクトないんじゃないかなー、と思う。さらに、斧から手が離れていくスピードのぬるさやガニ股の足が残る長さも絶妙。
で、薪割りの直後は、ボロい小屋からヴァイオリン弾きながら出てくる長髪のメンバーの映像で、このヴァイオリンの人が何かビデオの中では明らかに他のメンバーに対して異物というか、バンドの外部にたたずむ森の精みたいなポジションを獲得していて、特に昼食後の不条理としか言いようのない乱闘シーンのあと、一瞬だけ出てくる、背をかがめて狭い軒先みたいな所で演奏している時の表情が絶品で、こちらとしては何とも表現しがたい複雑な気持ちになる。一体この人は何を考えて、どういうテンションでこの野獣の群れのようなバンドに参加しているのだろう、と。
ただ、思ったのは、イントロのシーンの後もずっと(特に打楽器の演奏シーンや歌唱シーンのアップの時によく分かるのだけど)インパクトの瞬間の画と音がズレ続けていることで、これは要するにビデオをmpgとかにエンコードするときに、いわゆる音ズレが生じてしまっているだけなのかもしれない。そうすると、件のイントロの薪割りシーンの面白さは偶然の産物ということになる。他にも、やたらめったらな乱れ打ちに見えるパーカッションも、本来はビートに乗ったものなのかもしれない。何か全体的に画と音がズレていることと、時折無作為に挟みこまれる記念撮影みたいなシーン(ボーカルのやつがハンドサイン出して笑ってるだけとか)、やや内輪な感じの思いつきでやっているとしか思えないビデオの構成が、その「乱雑さ」という一点に於いてリンクして相乗効果を生むことにより、このビデオをアートたらしめている感じがするので、それがたまたまデジタルエンコーディングの際の音ズレによって生じたものだとすれば、それはとても奇跡的だし、感動的な事だと思う。たまたまエンコードした人間が几帳面な人だったりしたら、音ズレしないようにエンコードをやりなおしたかもしれないし。
人間が全力で作り上げたものに偶然のエッセンスが一匙加わると、時々、奇跡的な事が起きる。なので、何かを作ろうとするならばまずは人事を尽くして、天命を待つべし、と思った2008年8月2日。


[追伸]俺はこんなもんじゃないのmyspaceに1stアルバムから「texas」を追加しました。最近回線が光になったのでこういう作業がラクになったのです。