Dangerous Mind

Dangerous Mind

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暗闇の中でパソコン中、光に誘われてやってきた羽虫が光源である17インチディスプレイの上を、人間の私から見たら全くもって理屈もへったくれも無いような動きであちらこちらへ移動している。メールを読んだりウェブサイトを見たりする際に、気になると言えば気になるのだけれど、決定的に邪魔になるというようなことも無いので(小さすぎるのでどんなに頑張っても画面の10000分の1しか隠す事ができない)、私はその存在を時々目で確認しながら、黙々と、作業なのか娯楽なのか最早自分ではわからない、インターネットに関するほぼ全てのアクションをこなし続けていた。この、IT産業(但し、この言葉の意味するところも実は私にはよくわからないのである)の勃興とともに、他の一般家庭と同じようにきちんと我が家にもやってきた日課には、果たして終わりがやって来るものだろうか、生態系にも、小説にも、国家にも、天気にも、終わりはやってくるというが・・・、上唇に鉛筆の1本でも乗せて考えてみたいところだが、あいにく現在の我が家には鉛筆もなければ上唇もなく、せいぜい冷蔵庫にまあまあ冷えたコカコーラが半分残っているくらいである。数件やってきた仲間内のメールの幾つかに返信を書く間、羽虫は幾分身体を斜めに傾けて、画面を上から下に滑るような動きを繰り返していた。こいつの一生は勘違いなのか?それとも俺の方が・・・私は自分の肩の後ろに、2、3体の幽霊が今、立っていてくれたらほんのり素敵な事だろうに、と思うのだが、無いものねだりをして可愛い年頃ではないし、そもそもそんな年頃は何年さかのぼってみても、もともと存在しないので、今は洗面所にあるスプレーで髪の毛を全部逆立て、ただただ、布団に入って眠ろう、と思った。