Dangerous Mind

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CDが全部売れた

前日の日記で大切なことを書き忘れていた。10月1日のライヴの物販で、俺はこんなもんじゃないのファーストCD「epitonic」がとうとう全部売り切れました。(但しディスクユニオンに僅かに店頭在庫あり)ささやかな枚数だけれど、自分にしては大変よくやった。最終的な売り上げ枚数のうち、ディストリビューター経由でタワーやHMVにいったのは全体の三割くらいで、残りはすべてライヴ時の手売りや、小売店での委託販売、インターネットの通販でした。レーベルの宣伝力もなければメディアに掲載される事も殆どないうちらの音楽を、ライヴやネットで聴いて、純粋に気に入ってくれた人たちのサポートによって、最初にプレスした枚数を三年かけて売り切ることができました。今まで購入していただいた方々、本当にありがとうございました。
以前はものを売るには宣伝が欠かせないものだと考えていて、実際今もそう思うのだけど、宣伝の質はこの数年で大きく変わってきていると思う。ネットを介した音源の試聴環境は以前に比べて比較にならないくらい整えられているので(って、それは俺が新しくパソコン買い替えたばかりだから余計に激しくそう思うのだが)、その音楽に関する惹句や、アーティスト自身についてのインフォメーション、著名人のコメントなどの文言よりも、音源そのものの良し悪しによってダイレクトに消費者に判断してもらい、それが売り上げにつながっていくような、アーティストにとっては、ある程度理想的な状況に近付いていっていると思う。試聴用音源を無理なく聴いてもらえるだけのテクノロジーは既に存在するのだから、我々のやるべきことは、音楽の質をさらに磨き上げていくために努力するという当たり前のことと、いかに自分たちの音楽を、それを必要としている人たちからアクセスしやすい状況に配置するか工夫するということの二点だと思う。後者に関しては既存のメディアによる大雑把な広告方法は、もはや決して効果的なものでは無いと言える。自分たちの商売の規模でいったら3000枚売れれば十分良いわけで、テレビや雑誌で不特定多数の人に大量に、文字のかたちやダイジェストされた(サビだけとか)音源のかたちで、購入を呼びかけるような方法は、それにはそぐわない。それよりも気に入ってくれそうな人にダイレクトに、できるだけ完全な形で音を聴かせる方法を工夫する方が、無駄な宣伝費もかからないし、売り手にとっても買い手にとってもストレスが無くて自然だと思う。
聴いてもらって気に入られないのであれば単純に諦めがつくけど、広告費がなかったからだとか、有名な人のコメントが無いからだとか、そのコメントがイマイチだった、写真がヘボい、間違って紹介されている、などの理由で良い音楽が伝わるべき人たちに伝わらない事はあってはいけないと思う。音楽はまず第一に音楽によって判断されるのが一番で、それを可能にする環境を我々は今既に手にしているものだと、自分は考える。
例えば、何もない真っ白の状態でアーティストに対して、文字だけのプロモーションを金で買うのと、音の出るプロモーションを低予算で発信するのを選ばせたら九割方は音の出る方を選ぶと思う。ただ、ほんの十年前くらいまではブロードバンド環境がまったく普及していなくて、選択肢が無かったっていうだけで、編集部にCD専用のゴミ箱があると噂される権威ある有名音楽誌のインタビュー付広告を大金はたいて買ったりする事の費用対効果は、少なくとも以前と同程度であるとは、言えない。技術の進化のスピードからいって、昨日と今日が同じであるかどうかも疑わしい。
まあそういう事とかを、今の時点で問題意識を共有できているであろう人たちと一緒に話しあって、できるだけ効果的な、自身の身の丈にあったプロモーションを各々カスタマイズできればと考え、最近参加したネオアンダーグラウンドの話し合いは、そういう建設的な方向性で活発になればと思っています。が、このネオアンダーグラウンドに関しては様々な誤解、憶測がとびかっていて、これは一重に発信者側のプレゼンテーションの仕方が悪かったんでしょうが(ミクシー内でやってるつうのもやっぱデカいよな)、このフォーラムの核心は、音楽に関わる人たちが利害関係なく話し合い、互いが蓄積した情報・ノウハウを共有できる場をつくる事によって、現在アーティストが負担している音楽外のストレスを少しでも減らし、今よりも音楽活動に専念しやすい環境を自らの手を作り出していくための試みだと、自分は認識しています。別に変なムーブメントを立ち上げようとか(ゴスロリの次はネオグラだ、とか)、このフォーラム自体によって知名度を上げよう、とか(どういう誤解のされ方かわかんないけど、俺もdeadk君も他の参加者も最低限その辺のダサさの閾値というか、そういうのはクリアした上で音楽やってますよ。何でも小バカにしたような目で物事を見すぎでしょう)そういうのでは無いんですけどね。まずはそういう誤解をゆっくり丁寧に解いていかないと有益な話し合いはスタートしないので、環境を整えていくことが発起人の役割でしょうな。
そんなのゆっくり構えてないとやってらないので、まあゆっくりやりますよ。

CD「epitonic」イラストはタワー吉田。