Dangerous Mind

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第八回 作業週報

定期コーナー 作業週報
その週に作業した曲の仮タイトルをメモっていくコーナー。
第8回  2015年第38週 <9/14〜9/20> 
18 to 25 in white cube from LONDON
18 to 25 in white cube from LONDON feat.M


ループ感のある楽曲について


ループベースの曲を作る際、最初から2小節なり4小節のループフレーズを組み上げていくよりも、まずはオーソドックスなコード進行のある曲をザックリとでも作って、その中のある一部分を抜き出す、という一手間かけたループの方が、自分の中で想定していなかった驚きが生じて、良いループになりやすい。
ループの質というものは、ループさせる事によって初めて生じる予想外の驚き、というものの占めるウェイトが大きいからかもしれない。
またこの手法には、ループ箇所以外のバッサリと捨てられた部分が結果的に、楽曲全体に対する何らかの滋養になり得る、という側面もある。
例えば映画やドラマの脚本の書き方について、その登場人物一人一人の、本編では描かれないエピソードや来歴、家族関係、仕事の同僚や、服や食事、映画、音楽の趣味、幼少時のニックネームまで、とにかく作中に出てくるものも、出てこないものも、書ける設定は全て書きなさい、みたいな事がよく言われるが、それに近い話なのかもしれない。
それは作り手側の気分の盛り上げや、自己満足のためではなく、作品世界の持つ文脈の影のようなものが、不思議なことに受け手の側にも無意識的に感じられ、その作品の持つ印象がより立体的になるからである。
その事に通じるメカニズムが、ループ感のある楽曲についてもあるような気がする。
それは人の認識にまつわる話としても、とてもミステリアスで興味深いことだ。
ただしループ楽曲の職人クラスになると、最初から、そういう驚きや、文脈の影のようなものを含んだループを、ループ単体で生み出せるものなのかもしれない、とも思う。
ところで、全てのサンプリングの背後には、当然そのサンプルの持つ文脈、バックグラウンドが存在する。それでいて、世の中には良いサンプリングと良くないサンプリングというものが存在する。そしてそれはこの話とは、また全く別の話である。