Dangerous Mind

Dangerous Mind

さらっとビデオを5本借りたは良いが、うちのテレビはこの一年くらいの間絶不調で、定期的に自動で電源がオフになる特殊な病気にかかっているのだった。消えたテレビの側面をバシバシ叩くと時々「チュイーン」とかいって復帰するのだが、こちらが気を抜いた瞬間に「チュン」とか鳴いてまた消えてしまうのだ。電化製品に詳しい友人の話では、内部の電子銃という部品がダメになっているとのこと。そんなもん交換しようがないわ交換する金で新しいの買えるわで、このオンオフ作業を5回くらい繰り返して手のヒラがいい加減ジンジンしてきた頃、やっと電源が安定するのだった。なので、うちでテレビを見るというのはとても根気のいる作業であり、しかし俺は合計10時間分以上のビデオテープを一週間の期限付きでレンタルしてしまったのだった(それからもう二日たった)。しんどい週になる事だろう。
インターネットがもうだいぶ普及しつくした今でも、やはりまだまだテレビは生活必需品という認識があり、さっさと新しいのに買い替えろ、という有形無形のプレッシャーを内外から受け続けているわけだが、しかしこのどうしようもないアイワのボロテレビ7年生にいかんともしがたい愛着、のような不思議な感情を抱いてしまっている。映画の世界に没入し、見入っている瞬間に「チュン」と言って画面が消え、一気に現実の世界に引き戻される時の不条理な感じ、その時感じる果てしないストレスを、いつの間にか愛してしまっている自分がいる。テレビの調子に合わせて自分もどこか故障してしまったのではないかと思う。
この日は比較的電源が安定していて、続けて二本、ミケランジェロ・アントニオーニの「欲望」と鈴木清順の「けんかえれじい」を見る事ができた。いつものように画面消え消えのブツ切り状態にならず安心した俺は「欲望」再生中の殆どで寝てしまった。「けんかえれじい」はちゃんと見た。強引で意味不明なパワーがあって、自分にとって理想的な、これから生きていく上でに欠く事のできない素晴らしい映画だった。特に終盤10分の展開のついていけない加速感、イメージシーンに余った全ての説明をゆだねるような強引な手法が胸に突き刺さった。すごく良い。
夜は四谷へ行く。俺はこんなもんじゃないの練習。いつもと違うスタジオ。夜景が見えるグッドポジションで演奏。曲の断片のようなものが幾つか生まれ、その殆どはカセットテープの上で死ぬ。先月作った曲の練習/アレンジ。この新しい曲は自分が今まで作った曲の中では一番演奏するのが難しい。どのパートが、というのではなく、全体の組み合わされ方が難しい。やっている最中は自分のギターの事で手一杯で判断つかなかったが、家に帰ってみて聴いてみるとだいぶ良い感じだ。曲名は特に意味なく「フィールド」だろうと心の中で確定する。よし。
けんかえれじい [DVD]