Dangerous Mind

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日記 まとめて

11/9 先日購入した携帯電話のメール機能がメモ帳として便利だということに突然気付きさっそく使ってみたくなったが、特に書きたいことが思い浮かんだわけではないので、とりあえず乗っている電車の車内風景を描写してみる。自分から見下ろす位置に腰掛けている白い長袖Tシャツ、白い帽子に、白いズボン、そして大きなメガネの男はさっきから熱心に小林よしのりの漫画(おぼっちゃまくんではない。ゴーマニズム宣言)に赤線を入れ続けている。正面の専門学生二人は千里眼がどうとか、剣がどうとかと謎の会話を続けている。世も末なのかもしれないと思う。そのとき頭の中になぜかマイケル・フランクスの「アントニオの歌」が流れた。
この車内メモをさっそく携帯から自分のPCに送信して保存してみようと思ったが、メールの契約をしていないので送れないということがわかりガックリ。

11/10 OWKMJの二管化、ホラーDVDの音楽作り、仕事環境の変化など気分的にあわただしい。こういう時に限って、些細なことがものすごくややこしい出来事に発展したりするものなので気をつけなければならない。
SPDXでCOJOのライヴ。抑制をこころがけたのだがここ数日の練習不足が災いして、単なる遠慮がちな演奏になってしまったような気がした。しかしROKAPENISさんのVJと安藤さんのPAがすばらしかったので何とか見れるものにはなったのではないか、と思った。その後のspacebaaの不破さんのベースは、それこそ抑制されつつも押し出しが効いてる感じがして、自分の演奏と比較して反省。
見に来ていた船橋さんとエズラの協力によってCOJOのアルバムタイトルが「INDUSTRIAL UNITY」に決まる。久恒さんと武田さんの出してくるアルバムタイトルのセンスが同一なので皆困っていたのだが、最終的に外部から良い案が出て助かった。

11/11 朝、岩永君からメールで、暇だったら今日の真美鳥のライヴに出てくれないかと頼まれる。事態がよくわからないまま了承する。阿佐ヶ谷で「ほんこわ」(音楽をつけることになっているホラーDVD)の打ち合わせをした後、UFOクラブへ。岩永君以外のメンバーにライヴの日程の連絡が伝わってなく、それでも3人は来れたが、ベースの中田君は来られなかったとのこと。自分のほかに藤乃家舞さんとユダヤジャズ相馬さんも召集されていた。
ライヴはセッションだったが、何の準備もせずいきなりやってうまくいくはずもなく、散々な感じに。散々な状態が40分くらい続いていて、個人的には良いと思った。終わったあと岩永君と「平和な演奏だったね」などと感想を言い合う。その後、相馬さんの話が止まらなくなる。物事の適正価格の話や、漫画「トーイ」の話、ギャグ漫画の盲腸ネタが最近無いという話や、相馬さんは本物のエコロジストなのでライトなエコを見てると虫唾が走るという話(同感だ)、岩永君のバイクをやたらほめる、など。会場に知り合いがたくさんいたのだが、相馬さんの話がいったん区切りがついて会場を出るころにはすでに誰もいなくなっていた。この日は大雨が降った。

11/12 坂口君から借りたブラッド・メルドーのCDのよさが四回目くらいでようやくわかってきた気がした。再び休符を演奏するということの重要性に思い当たる。最近の自分は無駄に音が多くなっていたような気がする。
ところで最近ほうぼうで太ったといわれるのが気になる。経済状態と栄養状態が直結しているということが如実でむなしくなる。朝起きてすぐ角砂糖を食べるのが良くないのだろうか。

11/13 家にあるエリック・ドルフィーのCDをたくさん聴く。あらためて世界にほかに類を見ない奇妙な音楽だと思う。管楽器が複数ある変なバンドとして、とても参考になる。夕方までにDVDの音楽制作六割型終わる。
夜は真美ちゃんの企画でOWKMJのライヴ。朝から小雨が降っていてひどく寒い。村上春樹の「遠い太鼓」に出てくるミコノス島の天気というのはこんな感じなんだろうかと思う。開演前にユニオンパンク館でWIREの3rdとTHEORETICAL GIRLSの編集版を購入。
ライヴはやはり二管でやれるのが楽しく、ここ数回人前に出て行くのが正直億劫な感じだったが、気持ち的に元に戻った、気がした。自分は常に調子に乗った感じにしてないと周囲の人が逆に気を使うので、がんばってなるべく調子に乗ろうと思った。大阪、静岡から見に来てくれた人や先日ビデオで共演(といえるほど芝居はしてない)した女優さんが来てくれてうれしかった。

11/14 THEORETICAL GIRLSを爆音で聴く。音楽的な実験、実験的な音楽というコンセプトと、人の情念とは概念的には対立しているが、実際には結びつきやすいものだと聴きながら、ふと思った。あと、全然良い音ではないと思うけど、このCDの音質は好きだ。
昼から横浜で某バンドのレコーディング作業。オバマが日本に来ていたせいでやたら都内の道が混んでいて時間が足らなかった。悔しかったので後日オバマがその日行ったスピーチを読んで見たら、とてもまともな事を言っていたのでファンになった。
帰宅してジム・ホールの「コミットメント」と「アローン・トゥギャザー」を続けて聴く。あの跳躍するようでやわらかいタッチは一体どうやって出しているのだろうと思う。どちらも最高のCDだ。

11/15 前日、レコーディングしたファイルの流し込みなどをしていて結局寝たのは朝方だった。スローペースな午前中、CDBABYのサイトに久々にログインしてみると案外配信でOWKMJが売れていることがわかる。これからは海外にも宣伝がんばろうと思う。近所の図書館に行き、ショーケン自伝、ウォルト・ディズニー伝、インタビュー集「博多とロック」、川勝正幸「ビデオショップ午前二時」を借りる。玄関ホールで署名活動をしていたおじいさんから被爆体験記録の文集を200円で買う。DVD音楽の制作から逃避するためエレクトリック・レディランドのブックレットに載っているジミヘンの手紙を原文で読んでみるが、さっぱり意味はわからない。訳文を見てもよくわからなかった。shuggie otis「inspiration information」を聴く。良盤だと思うが、この日の自分の気分的に押し出しの強さに欠ける。もっとボーカル曲が聴きたい。その後夜を徹して作業。

11/16 LAにすんでいる友人の健康状態が良くないとの知らせが届き、心配になる。自分の父親が病に倒れたとき、自分は高校生で、そのとき一瞬だけ医者になって人を助けたいと思ったのだが、それは自分の生き方ではないと思い直して結局最終的に今の気楽な稼業を選択した。こういう悪い知らせを受けたとき、圧倒的な無力感を感じるのはそのツケだと言えるだろう。それだけの教育を受けるチャンスは無かったとは言えないのだから。
とりあえず祈るしかない。人が祈るというとき通常は信仰している神なり仏なりに祈るものなのかもしれないが、ただ漠然と、自分のエネルギーなりなんなりを送るような気持ちで祈るというのも、それはそれでアリなのではないかと思う。少なくとも無しではないだろう。
高田馬場のタイムでカーペンターズの「遥かなる影」、アルビニ録音のストゥージズの新譜、スタン・ゲッツアストラッド・ジルベルトが「ゲッツ・ジルベルト」以降に作ったアルバム、エールの2nd、ジャック・ディジョネットの80年代のCDを購入。
この数日睡眠時間がとても短いような気がしたので、眠くなかったが無理矢理9時に寝る。

11/17 早起きしてDVDの作業をするが、あと一話分手がつかず。出掛けにSUEDEの1STを爆音で聴く。とにかく楽曲の質とバーナード・バトラーのギターが素晴らしい。仕事をしたあと、日比谷の高橋コレクションに「ネオネオ展」を見に行く。田中さんが出展していたため。三宅砂織さん、藤田桃子さんの作品が印象に残る。
夕食に入った中華料理屋でシナロケがかかっていたので、珍しい店だなあと思ったら、たまたま有線でかかっていただけだった。味は普通。
その後新宿に移動して喫茶店にて某レコーディングの打ち合わせ。最初、20分くらい誰もオーダーをとりに来なかったので、これはこのまま打ち合わせを終わらせて、風のように、あるいは霊のようにこの場から立ち去ることが可能なのではと思ったが、しばらくしたら店員さんが気づいてしまい、その願いは叶わなかった。しかも思っていたよりメニューは高かった。いい年してそういう事を期待するのはもうやめようと思った。

11/18 起きぬけにストゥージズとワイアーを聴く。夜、森内君が家に来て「ほんこわ」作業。いくつか映像の尺が変更になったので、それに音をあわせたりタイミングを変えたりする。太った人が電車に轢かれるシーンの音をうまい具合に合成できたのが嬉しい。いったん外に出てラーメンを食ったりしながら結局始発まで作業。家があまりに寒かったので最終的に森内君は毛布にくるまっていた。

11/19 ブラッド・メルドーのCDを聴きながら、音楽を魔法や神秘的な現象の類であると信じながら聴くのと、物理的な現象であると考えながら聴くのとでは、その受容体験はまったく別のものになる、また、それを信じさせるに足る演奏と、そうでないものが世の中にはある、と、ふと思う。音楽を魔法の類のもの、日常生活の物理的な法則やらなんやらに必ずしも束縛されないものと信じて聴くというのは、ある意味余裕の無いリスニング態度であるとも言えるが、しかしそれは悪いことではないし、時として必要であるようにすら思える。
夜、年下の友人にある相談を受ける。古本屋でなんとなく「かもめのジョナサン」の文庫を購入。
その後ペンギンハウスでCOJOのライヴ。開演時、会場内に人が2人くらいしかいなかった。演奏は悪くなかったが、外音的にもう少し詰められそうな感じが、終わったあと見た人と話していてした。理想を言えば専属PAを雇いたい。

11/20 六本木のスタジオにて「ほんこわ」のMA。エンジニアが優しい、柔和な感じの人だったので、割と思ったとおりに注文を出すことができ、数点思い残すところはあるものの、うまくいったと思う。まあ本来なら優しい感じだろうが怖い感じだろうが言いたいこと、言うべきことはちゃんと言えないといけないのだが・・・。しかし現場がものを言いやすい雰囲気であるのとそうでないのとでは作業の効率がぜんぜん違ってくるということは確かで、お互い言いたいことも言えないようなストレスフルな環境ではうまくいくものもうまくいかなくなったりする。自分も気をつけようと思う。
その後三茶に移動してCERO山本精一さんのライヴを見る。CEROは良いバンドだと思うが、バンドの雰囲気から期待されるほどには曲がキャッチーでないように感じられるのが残念だと思った。山本精一さんは最初歌うのが嫌そうだったが、やってるうちに段々元気になっていった。千住さんのドラムと一体になって「物凄いなあ」と思う瞬間が2,3回あった。
終演後、吉田くん、ゆきんことくだらない年齢の話などで盛り上がる。朝から何も食ってなかったので「腹減った」を連発していたら会場にいたミステイクさんがガムとピーナッツをくれる。帰り際に「ピーナッツありがとうございました」と言ったら「そんなこと・・(わざわざ言わんでいい)」と言われた。確かにそうだ。

11/21 前日の夜中にコンビニの焼肉弁当を食べたせいか、胸が痛い。この胸筋の痛みに合った音楽はないかということでTHEORETICAL GIRLSを聴く。思ったとおり胸が痛いときのBGMにぴったりだ。明日は永田の結婚式でハズレッシヴで一緒に演奏しようと言われたのだが、いまだに何時にどこに行けばよいのか全く連絡はなく、さすがだと思う。そもそも結婚パーティーが新郎のわけのわからないバンドがたくさん出るライヴイヴェントなんかでよいのだろうかと少し心配になる。
夕方、大泉学園シネコンにてマイケル・ジャクソンTHIS IS ITを観賞。とにかくマイケルのひたむきさ、謙虚さ、ファンへの誠実な態度には脱帽するしかない。そしてスタッフに対するまったく構えたところのないフレンドリーな態度の中に、真のプロ根性を垣間見た気がした。そうやってスタッフ一人一人の能力が最大限引き出され、人種も年齢もバラバラな集団が一丸となって最高の舞台芸術を作り上げていく。そのときの「アメリカ的」と形容するしかない、現場にみなぎる活気が一番印象的だった。途中、マイケルが亡くなることも忘れて、早く本番のシーンにならないかなと思っていたくらいだ。また、それだけすばらしい現場だっただけに、マイケルの突然の死による、とてつもない失意や、恐ろしい混乱、スタッフの絶望感を思うとやりきれない気持ちになった。
とにかく良いものを見たと感動しながら駐輪場に戻ると自転車がパンクしていた。腹が立ったが盗まれるよりはマシだと考え押して帰る。目白通り沿いのハードオフに行きたかったのだが、自転車が重いので泣く泣く諦める。途中良い感じの古本屋を発見し、フィッツジェラルドヘンリー・ミラーの短編集、カミュの「シシフォスの神話」、カフカ夢分析の本、カポーティティファニーで朝食を」の文庫、を購入。大泉学園は田中さんの家に遊びに行く時以外行ったことがなかったので、のどかなイメージがあったが、意外と文化的な場所だということがわかった。その後灰緑の山口君、かえるさんと道でバッタリ遭遇したりして、まあ結果的にパンクしてよかったような気もしないでもなかった。

11/22 今年一番の冷え込みをみせる。前日、たけしのニュース番組を見ていたらいつの間にか早寝してしまったので、早朝に起きだして買った文庫本をパラパラ眺めたり、ハービー・ハンコックのCDを集中的に聴いたりして遊ぶ。その後OWKMJの曲アイデアを二つほど練ってみる。といっても一つは「ほんこわ」で使用したフレーズを再利用したものだが。
音楽学大里俊晴先生の訃報を知りショック。大学時代に習った先生の中でもっとも身近な存在感を感じた人だった。かばんがディスクユニオンの袋だったし。また、自分以外の学生には殆ど当てはまらないかもしれないが、社会に出て唯一と言っていいくらい役立った授業だった。(ついでに大学で印象的だった授業をもう一つ挙げるなら、それは宇波彰先生の現代思想の授業で、鮮烈なまでにわけがわからなくて感動した。一種のパフォーマンス・アートだったのではないかとすら思う。)大里先生の著作の「ガセネタの荒野」は舞台が80年代吉祥寺マイナーという異色の青春物語で、とても面白い。合掌。
夜は永田の結婚パーティーで横須賀へ。飲み放題だったためわりと早い段階で泥酔してしまったようで殆ど記憶がない。10杯くらいしか飲んでないつもりだったが、15杯は飲んでいたと訂正される。最終的にはカクテルを色で注文していたとのこと(テキーラを透明にしたもの、とか)。うっすら残っている記憶の中では、とてもいい雰囲気の結婚パーティーで、特に桑原君の永田への友情を感じて胸が熱くなった。ハズレッシヴも永田に対する祝福の気持ちを、幾分ディストーションがかかった形で、思い切り表現できたのではないかと思う。ライヴの前にすでに呂律がまわらなくなっていた俺は、ドラムの演奏で頭を振ったせいで余計に酔いがまわり相当ひどい状態に。しかし奇跡的に家には辿り着いていた。永田君本当におめでとう。

11/23 昨日どこかで何かにぶつけてしまったらしく右手が痛む。しかし寝る前に飲んだウコンの力のおかげで二日酔い数歩手前の地点にとどまり、ただただボーッとした状態で、横須賀・リトルアムステルダムにおける友情にあふれたいい感じの空気感を再現すべくビートルズを聴いたりする。
昼に高円寺の石狩亭の火事のニュースを知りショックを受ける。先月も含めて何度か行ったことのある店だし、店員さん達のことも覚えている。とにかく悲しい。昨日の大里先生の件といい、やりきれない気持ち。
夜はオーディオユニオンでレコードプレーヤーを物色したり、ふと思い立ってMAC OS snow leopaldアップグレード版を買ったりしたあとピットインでPHONOLITEのライヴを見る。見ていると自然と音楽が自分の中にストックされていくような、降り積もっていくような、そんな感じがする。具体的なアイデアもいくつか思いついた。帰宅してからCDであらためてフォノライトを聴いてみる。