Dangerous Mind

Dangerous Mind

浅草へ。太鼓館という世界中のパーカッションが収集・展示してある博物館に行く。一階が和太鼓のお店で、四階が展示室になっている。陳列された打楽器の殆どが試奏可能との事で、中には相当貴重そうで今にも壊れてしまいそうな古い太鼓も混じっているので、こっちで「大丈夫か?」と心配になったりした。お客さんは自分たち含めて三人だけだったので、じっくりと見ることができて、とても良かった。どこの国だか忘れてしまったのだが、アフリカ大陸のどこかの国の胴長の太鼓で、戦争で殺した敵の腕をかたどった飾りの付いた太鼓があって、それがとても印象に残った。殺した人間の象徴を打楽器に刻みこんで、それを生き残った側の人間が打ち鳴らすという行為に、何かしら、ハードな、愛のようなものを感じたからだった。その戦いは、椅子に座って画面とにらめっこしながら標的を破壊していくような、時々ニュースで映像が流れるような、現代の戦いとは違っていて、敵もまた自分と同一のラインにいる人間である事を強く認めたうえでの、殺し合いだったのではないかと思った。大雑把な、一気にたくさん殺したり、殺されたりするような戦いからは決して生まれる事のない、美しい、それこそ芸術としか名付けようのない何かが、そこにあると思った。誤解かもしれないが。
新宿へ。ドラムの椅子を購入。そのまま中央線で武蔵小金井アートランドへ向かう。結構混んでいたのに俺は椅子を持っていて、迷惑だった。そういえば前の週の金曜日、UFOクラブからの帰り道にも俺は椅子を拾って、それを西武新宿線終電車で持って帰ってきたのだった。最近電車で椅子を輸送する機会に恵まれているが、混んでる時は本当に迷惑だと思う。特に先週金曜の場合は車内が混み過ぎていて、俺は椅子を頭の上に載せたまま三駅分ほど過ごさねばならなかった。人間が椅子を運ぶ時に、その場所があまりに混んでいると、椅子が人間に座ってしまうような事だって起こりうるのだ。
アートランドではスッパマイクロパンチョップ主催のころがし祭りがおこなわれていた。俺は初対面のアクセル長尾さんという人と漫才をしなければならなかったのだが、人見知りなのでうまくいかず、うまくいかなかったので面白かった。計30組くらいのコンビが出たのだが、バッファローと大木カントクという人のやつが圧倒的にすごくて、心底感動した。それは、本当に、本当に、どうしようもなく、しょうもない、ぐだぐだな、セッションで、本当に、一点の曇りも迷いもなく、ひたすらダメな感じで、ある種の厳しさ、冷徹さをすら感じさせるライヴだった。これは馬鹿にしていたり、何か皮肉で書いているのではなく、本当に、心の底から、感動できる、強度のあるダメさのライヴだったのだ。絶対勝てないと思ったし、こういうドキっとするような、自分の心を、今まで見た事のない新しい刃で切りひらかれるような体験こそが、自分の求めているものなのだと思った。これもまた、芸術としか名付けようのない、何かであると感じた。